ヒアルロン酸は,ある特定の構造を持つ化合物を指しているわけではなく,ある決まったパターンを持つ多糖類の総称です。
これ自身が水分を保持する能力には優れておりますし(1gで6ℓの水を保有する力がある),
実際体の中でも角膜をはじめとする様々な部分に存在し,保水力を発揮している場合もあります。
しかし,クリームのように皮膚表面に塗ってそのままにしておけば保湿能力を発揮してくれるとは思いますが,
石けんに配合して使った時にどういう効果が期待できるのかという話になりますと,ちょっと疑問が生じます。
洗い流してしまうものですので・・・。(とりあえず経口投与しても何の効果もないのは確かっぽいですが(^^;)
また,苛性ソーダが生きている状態でヒアルロン酸を加えたら,当然糖鎖間で加水分解が起こり,
ぶつぶつに切れて保水能力も何もなくなってしまいかねないような気がします。
なので,もし入れるにしてもタイミングを計る必要があるかもしれません。
この辺にチャレンジする場合はかなりの試行錯誤が必要かもしれませんね。
さて,製造法に関してですが,モノ自体が同一なのであれば基本的にどうやって生産されたものかということと,
そのモノの性質は何の関係もありません。
(一部の業者では、ヒアルロン酸の生成方法が違うと危険、という記述があります。
動物性のものなら安心だが、熔血性連鎖球菌などに作らせて安価に大量に作っている大手の会社のものは危ない、
というような書き方をしている所もあります。
ですが、ヒアルロン酸についての論文が発表されておりまして、それを読みますと、すべての生体内で
発見されるヒアルロン酸には構造的な違いは無い。と明記されています。
これを読みますと、熔血性連鎖球菌であろうが、鶏のトサカであろうが、そこに生成されるヒアルロン酸は同じ、と言うことが出来ますね。)
石鹸関係で行くと,植物由来(ヤシ油)などから作られたラウリル硫酸ナトリウムと,
石油などから工業的に作られたラウリル硫酸ナトリウムでは性質が違うなどと宣伝している業者もいますが,
基本的に両者の間に差が生じることはありえません。あるとすれば,製法に伴う不純物がどの程度あるかと言うことになります。
では,どのような製法を用いると純度の高いものがえられるのかという話になりますと不思議なもので,
ラウリル硫酸ナトリウムのような低分子の単純な成分については,石油などから有機合成したものの方が純度の高いきれいなものができます。
しかし,ヒアルロン酸のように大きくて複雑な構造を持つものの場合,
今回のようにレンサ球菌や大腸菌,酵母などに作らせたものを抽出してきた方が,簡単にきれいなものが手に入ります。
ただ,手作り石けんでも未反応の油脂がしっとり感を出してくれたり,
ドライイーストよりも発酵力の弱い天然酵母を使って作るともっちり感のあるパンができあがったりと,
純度の善し悪しと好みの適不適は必ずしも一致しない場合があります。なので,その辺は試行錯誤が必要かもしれません。
しかし,基本的にどういう作り方をしようがヒアルロン酸はヒアルロン酸です。
もし「溶血性連鎖球菌以外のものから作ったから安全安心」などと言っている業者がいたとしたら,ちょっと不誠実な業者だと思います。
このような業者を相手にする場合,不必要なコストに対して高価な代金を支払わされるかもしれませんので,何らかの注意が必要だと思います。