1. 本当を言えばあまり捨てたくないものです(^^;)
    捨てないですむように、しっかりと計りたいものですが・・・
    それでも「分量を間違ってしまって、廃棄しようと思って・・・。」とか、
    「○○を入れたら何だか大変なことになって・・・廃棄するにはどうしたら いいのですか?」ということも聞きます。

    さて、廃棄するにはどうしたらいいのでしょう?

    答えは「充分に大量の水で希釈して排水する。」です。
    (工業規格の苛性ソーダの廃棄の部分にも書いてあるやり方です。)

    これはどこを調べても出てくる記述です。ですが・・・・実際にどのくらいの
    「大量」の水が必要なのか?これが私にはわかりませんでした。
    大量と言っても、人によって考える大量さってまちまちですもんね。

    まず、答えを書いておきます。

    強アルカリというのはpHが11以上のものを言います。
    私たちの作る石鹸用の苛性 ソーダ水溶液はかなり濃い濃度ですので、学校で習った定義からは
    ちょっと外れますが、pHは14以上あると考えて下さい。(pHは1〜14までと習いましたね。)
    (中性は7です。 それ以下は酸となります。)

    ※ちょっと余談となりますが、この定義はアレニウス定義と呼ばれるものです。
    (酸と塩基の定義は他にもありますが、割愛させて頂きます。)
    水に溶けてH+イオンを生じる物質を酸、OH−を生じる物質を塩基と呼び、指示薬やpHメーターによって
    強度を計ることが出来ます。この時の強度が1〜14、中性が7、と習ったはずです。
    ただ、実際には少々濃度を落としても、pHは14のまま下がらなかったりする水溶液になる場合もあります。
    こういう場合、pHは14以上あるな、という解釈となります。
    私たちの作る苛性ソーダ水溶液はこの範疇に入る訳です。
    ですから、希釈も相当大変なことなんですね(^^;)

    まず苛性ソーダ10gに対して、pHを11まで下げるにはざっと計算すると約250リットルの水が必要になります。

    そして、このpHを1下げるには、10倍の希釈が必要になります。
    pH10にするには、2、500リットル。
    pH9にするには、25、000リットル。
    pH8にするには、250、000リットル。
    うーん…確かに大量だ・・・・。

    この割合で希釈すれば排水してよい薄さとなります。

    pHが11であるのは、まだアルカリが強い状態です。
    廃棄するには、pH8あたりまで下げるのが良いのですが・・・。

    ご自分の使った苛性ソーダの量に合わせて、「廃棄するにはどのくらいの量の水が必要か。」と計算してみて下さい。
    苛性ソーダ10g、なんて少量では石鹸は作っていませんもんね(^^;)
    これを水で廃棄しよう、というのは実際には大変な作業です。


    さて、pHはどうやって測るの?という方、「紫キャベツの絞り汁」がとても便利で あります(^^)
    http://contest2.thinkquest.jp/tqj2003/60532/play/murasaki_h.htm
    これで目安をつけて排水できますよ。一度作っておいて、ペットボトルか何かに入れ、
    保存しておいて、もしもの時に使える状態にしておくのもいいかも知れません。
    水で希釈して廃棄するのなら、面倒でも、手間がかかっても、バケツいっぱいの水に水溶液を少しずつ入れながら、
    安全を確かめながら排水して行って下さい。(水道代は高くなるかも知れませんが、
    それは仕方のないことと思って下さい。それだけ危険なものを扱っているのですから。)

    そのまま濃いものを流してしまったらどうなるのか?
    「けっこう困ったことになる場合もある。」
    と思って下さい。配水管を痛める、浄化槽を痛める、ご近所に到達した苛性ソーダは「水生生物」には毒です。
    集合住宅や、ご近所のあるおうち、「ご近所迷惑」極まりない「ご近所の生活環境の破壊の原因」になるかも知れないと思って下さい。

    間違っても、新聞紙や紙オムツなどに吸わせて、そのまま廃棄、なんてことはやめて下さい。
    最悪の場合、衛生局の方が高濃度の苛性ソーダ水溶液に曝されることになります。
    そして、この廃棄の仕方は厳密に言えば厳密に言えば、です。)「法律違反」となります(^^;)
    (毒物・劇物取締法第15条の2)
    また、厚生省薬務局長通知によって定められた廃棄法、廃棄物の処理清掃に関する法律、水質汚濁防止法、
    下水道法、などにも同時に適合していることが求められます。
    その他の関連法律など。(関東化学株式会社 苛性ソーダ安全データシートより抜粋)
      
    毒物及び劇物取締法 第2条別表第2 劇物
    薬事法 第44条(施行規則第52条)劇薬
     危規則 第3条告示別表第3 腐食性物質
             航空法 施行規則第194条告示別表第11 腐食性物質
         港則法 施行規則第12条 危険物(腐食性物質)


    もし水溶液をそのまま流してしまった場合はどんどん(水道代のことなんか考えないで)流水を出し続けて下さい。
    実際には排水された苛性ソーダはどんどん薄められて行くのですが、それでも
    ご近所の範囲にはしっかりと強いままで到達するそうです。 
     
    そして、私たちの扱っている苛性ソーダ水溶液は、排水管や微生物浄化槽を破壊するのに充分な濃度なのです。

    楽しい石鹸作りを続けるためにも、ご近所から「どうして近所の川の魚が死んでるの?」
    (実際に私の住んでいる地域で工場が苛性ソーダを間違って流してしまい、川の魚が大量死しました。
    私たちの作る量とはケタ違いですので、私たちが流してもそんな事態には至らないとは思いますが、
    それでもいけないものはいけません。)とか
    集合住宅の場合、「普通もっともつはずの排水管や浄化槽がどうしてこんなにはやく痛んでしまったのか?」
    なんて疑問が出ないようにするためにも、廃棄する時は充分に希釈して流して下さい。
    最悪の場合、「お宅が浄化槽を治してよね。」なんて言われないようにするためにも・・・(^^;)

    また、実際には固形状の苛性ソーダなら、廃棄業者に頼めば引き取ってくれる所もありますが、
    私の住んでいる自治体では「引き取れません」と言われました(^^;)
    引き取ってくれる所もありますので、問い合わせてみて下さい。料金は様々ですが・・・。

    自宅て廃棄したい場合、実を言えば、大量の水で希釈して廃棄、というのは文字で書くのは簡単ですが、
    実際にやるとなるとものすごく大変な作業です(T.T)

    一番現実的な廃棄の仕方としては、「もうこれ捨てたい・・・。」という水溶液が出来てしまっても、
    廃油や、安いキャノーラ油を使って、鹸化をさせ、石鹸の状態にしてしまってから
    廃棄を考えるのが一番簡単なやり方であろう、と思います。
    (うまく出来れば食器用石鹸としても使えますし^^)
    油と混ぜ、ある程度熟成させてしまえば、アルカリ度も落ちますので、廃棄しても
    衛生局の方が高濃度のアルカリに曝される、なんて危険もなくなりますし、
    また、ご近所あたりに高濃度の苛性ソーダが排水されて行く、なんてこともなくなりますし・・。

    できれば廃棄なんてしたくないものですが、「どうしても・・。」の場合、
    上記の方法で廃棄を考えることをお薦めします。